2024.11.22 (Fri)
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2011.09.19 (Mon)
この物語はフィクションです。
全てはメイプルストーリーの世界観を基にした架空の物語です。
──────これはまだ暗黒の魔法使いが猛威を振るっていた頃のお話。
暗黒の魔法使いの恐怖に脅えるこの時代に、一人の盗賊がおりました。
彼に守られた二人の騎士は、強くなるために彼の素性を調べ始めます。
結果行き着いたのは、とある貴族の館でした。
最初に彼を告発した、加害者でした。
大きな洋館だった。
元狩人の私にはこんなところで住む人の気などまるでわからない。
館へとついた私たちは、入り口の警備兵に承諾を取る事に。
どうやら彼らは国から配備されているのではなく、館の主が私兵を雇っているようだ。
以前別の貴族の館を警備したが、ここの警備はそれに比肩できるほどの警戒っぷりだ。
兵士:ご主人様と連絡が取れました。どうぞお入りください。
剣士:ああ、ありがとう。
用件は彼を捕らえるための情報提供という事にした。
すでに辞めた身であるが、騎士団の階級も利用した。(彼女には策士だと言われた。)
執事:わざわざこのような辺境の地までよくおいでくださりました。こちらです。
だが、効果はあったようだ。
騎士として積み上げてきたものは無駄ではなかったらしい。
どうぞこちらに、と椅子を引かれたのでそれに従って座る。
女剣士:な、なんか落ち着きませんね・・・。
キョロキョロと辺りを見回す、それも当然か。私たちは任務以外は兵舎で寝泊りしていた。
このような場所に来る事はまずない。
執事:お茶を用意しました。よろしければどうぞ。
目の前にスッとコップが差し出される。
そのコップも私たちが使っている量産品ではなく豪華な調度品である。
剣士:ありがとうございます。
口に含むと・・・いいお茶の葉を使っているのだろう、とても美味しい。
私の姿を見て、彼女もおずおずとコップに口をつけた。
・・・もっとも、私が動揺しないのは、団長として様々なパーティ会場の警備をしていたからだ。
ただの警備ではなく、客人に成りすましての任務だったりしたので非常に大変だった。
執事:旦那様は現在実験の最中でございますので、もうしばらくお待ちを。
剣士:ええ。こちらこそ突然の訪問失礼しました。
執事:ご安心ください。旦那様はそのような事で気を悪くするような方ではございません。
やがて、階段のほうからカツカツと誰かが下りてきた。
貴族:大変お待たせした。おっと客人、そのままでかまわない。
椅子から立って挨拶しようとしたところを制される。
貴族:用件はあの忌々しい詐欺師についてでしたな。
剣士:・・・ええ。今更かもしれませんが実際に現場にいた人間から直接話を聞いてみたくやって参りました。
スムーズに用件に入れたのは嬉しかったが、彼自身に対して憎悪と言えるレベルの悪意を放っていた。
貴族:あれはもう人間ではない。月並みだが悪魔とか化け物といった表現のがしっくりくる。
この言葉に彼女がムッとしたのを感じたが、それを目で制す。
剣士oO(機嫌を損なわれて追い払われたりしたら手がかりがなくなる。)
それからしばらく、彼とは関係がありそうでない長話が続いた。
辛抱強く話を聞き続けた。
それが実ったのは話を聞き始めて一時間ほど経過した後。
内容は彼の親と会話したときの事。
貴族:大体あの時本当に竜が手に入っていたら実験も4年ほど早く進行したというのに・・・
剣士:あの時・・・竜?
私の問い返しにしまった、と言う顔をしたが、すぐに和らいだ。
貴族:まぁここまで話をしたからいいだろう。
内心でガッツポーズをした。
それまで饒舌に喋らせていたのが功を奏した。
貴族:その代わり、この話は他言無用にしてもらいたい。
剣士:わかりました。
断る理由はない。
剣士:かなり重要な情報だったな。
女剣士:そうですね。
館から出て、手に入った情報についてまとめる。
貴重な生物を手に入れたという彼の親からの話を信じ、実物を見に行くと、よく出来た偽物だった。
指摘し問い詰めると、逃げ出したので取り押さえようとしたところ、激しい抵抗によって何人もの負傷者が出た。
詐欺と傷害、子供は逃走し、親は極刑を受けたらしい。
・・・ここまでが、資料として残っていた情報である。
貴族は言った。
その貴重な生物というのは、竜だったと。
貴族:あの竜だけは本物だったのかもしれん。他にあのような生物は見た事がない。
もっとも、槍で貫かれて息絶えたはずだと付け加えた。
貴族:逃げたヤツが死体を抱きかかえていったらしく、付近を捜させても見当たらない。
そして最後に、
話も持ちかけてきたのは親だったが、竜を捕まえたのは彼であったという。
「「竜か・・・。」」
二人して同時につぶやいた。
その名だけなら誰もが知っている。
かつては人との交流も合ったらしい。
だが、人間の悪徳に絶望したらしくパタリと交流が途絶えたそうだ。
見捨てられるのも仕方ない。
騎士として、幾多の悪人を捕らえてきた私から見ても人間は欲深く、罪深い。
ならば、仮に本物の竜がいたとして、何故彼は竜を捕まえられたのだろうか?
剣士oO(・・・いや、問題はそこじゃない。)
当初の目的は暗黒の魔法使いを倒す事だ。
その為に彼の強さを調べ、近づこうとした。
かつて彼と戦ったときに言われた言葉を思い出す。
『俺に勝てなくても、ヤツを倒すことが出来る。』
単純に考えれば、彼は暗黒の魔法使いよりも強いという事になる。
けれども、そうじゃない。
剣士oO(私の視点から見た対暗黒の魔法使い戦、それを示した言葉だったはずだ。)
もし戦ったとしてヤツに攻撃は届かないだろう。
あの多重障壁を私が破れる・・・あれ?
何故彼にはそれを破る事が出来たのか。
・・・答えの可能性はすでに聞いている。
剣士:わかった・・・わかったぞ・・・!
これが彼の強さの秘密か!
盗賊:タイムリミット、だな。
元々期待する方が間違っていたのだ。
スヤスヤと眠っているガキと女を見る。
この数ヶ月あまり、結果的に共にすごした人間たち。
うるさかった、くだらなかった。
面倒くさかった、しつこかった。
盗賊oO(・・・けれども、認めなくてはならん。)
・・・楽しかった。
少しずつ強くなるガキを見るのは悪くなかった。
アイツが作る飯は正直美味かった。
目の代わりにと教えた魔法。
渡した魔道書、武器。
最初は暇つぶし程度に思っていた生活は・・・とても心地のいいものだった。
だが、それももう終わり。
この数ヶ月でヤツの力は回復どころか何倍にも跳ね上がっていることだろう。
それはアイツが心配していた事だ。
俺とてわかっている、わかっていて放置した。
理由はもう一つの可能性。
実らなかったが、それでも俺は後悔していなかった。
盗賊:では、あの時の雪辱を晴らすとしようか。
シスター:・・・。
続く(第十九話へ)