2024.11.22 (Fri)
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2011.09.21 (Wed)
黒い光の柱が消えると、そこにあった教会はなくなっていた。
消滅。どんなものだろうと跡形もなく消滅させる。
暗黒の魔法使い:いくらヤツでもあの一撃は無理だったか・・・おや?
ドサッ
どうやら上空に打ち上げられていたらしい。
無事だった理由は龍の力の恩恵だろうが、かなりのダメージを与えたようだ。
盗賊:・・・カッ・・・ハァ!!
暗黒の魔法使い:・・・まだ息があるのか。
ゆっくりと立ち上がるヤツを見て驚嘆する。
やはりヤツは人間ではない。
人間より上位の力を我が物にしている。
だが、竜の力だけで耐えられるとは思えぬ。
かつて竜族と戦ったことがあるが、今の一撃は上位の竜でさえ跡形もなく消す代物だった。
となると、ヤツは竜の力だけでなく、人としても例外だと言うことか。
盗賊:・・・。
ヤツには未知が多すぎる・・・殺す。念入りに殺す。死体を操るなんて事は考えない。
次の魔法は空中から先ほどの光線を辺り一帯に降り注がせる。
ダミーでは威力を維持するために一直線に放つくらいしか出来なかったが、今度は私自身が放ったものだ。
攻撃範囲は比べ物にならぬ。故に防ぐ術はない。
我が光線を切ったあのナイフもすでに彼方へと飛んでいった。
ドドドドドドドドドドッ!!!!
甘く見るなんて事はしない、だから一転集中ではなく周囲全体への攻撃。
そしてそれは正解だった。
どこにそんな力が残っているのか分からないが、ヤツは攻撃の大半を避けている。
ダダン!と強く大地を蹴って動き続ける。なんて化け物だ。
流石に最初のようなキレがなくなっているので所々命中しているが。
それでもヤツは動くのをやめない。解放した竜の力は生命維持に使っているのか。
だが、妙だ。反撃する意思を感じられない。
張りなおした障壁を破ろうとさえしない。出来ないのかもしれないが。
ヤツの狙いが読めない。
暗黒の魔法使い:分からぬ・・・何故そこまでする?もう動けるような身体じゃないだろう?
盗賊:・・・。
暗黒の魔法使い:人が憎い事について否定もしなかったではないか。
盗賊:・・・・・・。
暗黒の魔法使い:我がいなくとも、人の悪徳によって世界は腐敗されていく。そのくらい貴様とて分かっておろう?
盗賊:・・・ああ。分かるさ・・・。
盗賊:けどな!
そんな汚い世界にも!!大事にしたいものがあるんだよ!!!!!
ダダン!と足を踏み鳴らす。
瞬間、世界が一変した。
暗黒の魔法使い:な、なに!?
土地から供給されていた魔力が突如こなくなった。
盗賊:この土地は魔力を増幅させる力がある、だったか。俺から言わせりゃこいつは龍穴だ。とびっきりのな。
暗黒の魔法使い:龍穴・・・?
盗賊:大体意味は同じだから気にするな。というわけでちょっといじくらせてもらった。
暗黒の魔法使い:何を言って・・・!?
思い当たる。ヤツが幾度も強く地面を踏みならしていた事。
普通の人間が地面を踏むのとは話が違う。
世界最速の脚を持つヤツが全力で踏み込んでいたのだ。
グラグラと大地が揺れ、それは地形を変えてしまう程。
だが問題は・・・いったいヤツはどう変えたのだ?
ダダン!
もう一度ヤツが踏み鳴らすと、違和感はすぐにやってきた。
盗賊:返してもらうぜ・・・この土地を。お礼はたっぷりもらっていけ。
暗黒の魔法使い:戯言を・・・なっ!?
張っていた障壁が消えた。魔法を唱えても力そのものが消える。
力という力をまるで感じられない。
身体からも力がぬける・・・まるで大地に力を奪われていくようだ。
己に限った事ではなかった。すでに周囲に生きているものがなくなっていた。
力を供給していた大地が、今度は力を枯渇させていた。
盗賊:気づいたか?だがもう遅い。
暗黒の魔法使い:クッ・・・だが貴様とて例外ではなかろう・・・!!
盗賊:ああ・・・そのとおりだ。
しかし、倒れない。ヤツは動く。この何モノも生きられぬ土地で。
ダメだ、まずい。身を守るものが何もない!
暗黒の魔法使い:や、やめろ・・・!
盗賊:安心しろ。この現象は後数分もすれば元に戻す・・・お前を蹴り飛ばした後だがな。
ただの魔力封印なら易々と打ち破ってくれよう。
だがこれは世界があらゆる力そのものを枯渇させる禁忌の技だ。
立てなかった、動けなかった。・・・いや、立って動けるほうがおかしいのだ。
そして、ヤツはついに目の前までやってきた。
生まれて初めて抱いた恐怖。
暗黒の魔法使い:ヒィ!
盗賊:一発だ・・・もうここに現れるな。
ドゴォ!!
生まれて初めて、腹を蹴られて彼方へと飛ばされた。
ダダン!地面を踏み込み元に戻していく。
ヤツが倒れても俺が動けたのは単純に体力の差だ。
俺の生命力は確実に大地が奪っていく。自分でやったこととはいえ、容赦ない。
ヤツがもうここに戻ってくる事がないように龍脈を調整する。
龍穴の部分にあった教会はヤツの攻撃で消し飛んでいるが、まあなんとかするだろう。
ダダン!・・・ダダンッ・・・ダダン・・・
やばいな、脚に力が入らない。
これを済ませないとあいつ等がここに住みなおす事が出来なくなっちまう。
それはいかん。
こちとらあいつらがビックリする顔が見たくてわざわざヤツをぶっ飛ばしたのだから。
ダダン!ダダン!・・・ダダン!!!
盗賊:これで・・・最後・・・!
ダダンッ
これでいい。せいぜいここは住みやすい土地程度の気しかない。
ドサッ
すでに土地から力が奪われる事はなかったが、身体が動く事はなかった。
それでも、俺は満足していた。
盗賊:はは・・・思い出したぜ・・・友よ。
いつも見ていた夢の続きを・・・あの約束を。
続く(第二十話へ)。