2024.11.22 (Fri)
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2010.10.25 (Mon)
この物語はフィクションです。
全てはメイプルストーリーの世界観を基にした架空の物語です。
──────これはまだ暗黒の魔法使いが猛威を振るっていた頃のお話。
暗黒の魔法使いの恐怖に脅えるこの時代に、一人の盗賊がおりました。
盗めぬ物などないと言われた彼が出した犯行予告。
そんな彼を捕まえようと待ち伏せしていた騎士団でしたが、なんとその犯行予告は別の黒幕によるものでした。
仕掛けられた罠を解除し、品を持って去ろうとしますが、団長に呼び止められます。
─────────私と、一騎打ちしてくれ、と。
盗賊:一騎打ち・・・?そんな事をするメリットが俺にあるのか?
冗談ではないと伝わったようで、彼も真剣な態度で聞き返してきた。
団長:はっきり言ってないと思う、だからお願いなんだ。
分かっている、彼からすれば私の相手などせずに屋敷から脱出すればいいのだから。
それでも、私は戦ってみたかった。
今までずっと鍛えてきた私の剣技が通じるのか試してみたかった。
彼に勝てればきっと・・・!!
盗賊:・・・分かった、相手してやる。
しばらくの沈黙の後、彼は頷いた。
団長:!!
盗賊:まぁ、たまにはいいだろう。
手には小さな短剣が握られていた。
団長oO(しかし、あんな小さなナイフで戦うのか?)
そう一瞬考えたが、彼のことだから何かあるのだろう。
女騎士:な、なぁ!アタシも参加していいかな・・・?
おずおずと申し出たのは彼女だった。
一騎打ちと言った手前、私が承諾するのはあまり良くないのだが、彼は涼しげに言う。
盗賊:好きにしろ、俺はいつでもいいぞ、覚悟が出来たらかかってこい。
団長&女騎士:・・・!!
しかし言った瞬間、場の空気が変わった・・・凄まじい威圧感を感じる。
ただ立っているだけだというのにコチラが気を緩めたら気圧されて動けなくなるだろう。
女騎士:団長!先に行きます!!
彼女が威圧を振り払うように駆けだした。
女騎士:はあ!!
盗賊:フ───ッ!
ガキィンッ!
金属がぶつかり合う音。
彼女はそのまま彼に攻め入った。
女騎士:やあー!!『バルディッシュ』!!
キィン!
ガガ!!
シュッ!
キン!キン!
ガキィン!!
騎士団の剣技で最も速いとされる連撃を正面からさばいている。
女性でありながら騎士団の中では私に次ぐ実力の持ち主である彼女が押し切れない。
あの小さな短剣で見事にさばいている。
ガキィンッ!ギリギリ・・・
剣と剣と結ばれての拮抗状態になったが、密着状態の分は彼の方にあるようだ。
盗賊:どうした?このままでは拉致があかないぞ?
女騎士:『シールドブロウ』!!
盗賊:!
彼女は盾を思い切り突き出して彼を弾き飛ばす───っ!!
バキィ!!
女騎士:キャッ!
しかし、彼はあろう事かバク転で避け、その時振り上げた足で盾を蹴り飛ばした。
蹴りの衝撃に耐え切れず手から離れて宙を舞い、カランカランと床に落ちる。
女騎士:あ───ッ!
落とした盾を気にしたのがいけなかった。
そのわずか一瞬で間合いを詰めた彼が、彼女の胴体に鋭い蹴りを打ち込んだ。
ドォンッ!!
女騎士:キャア!
壁まで蹴り飛ばされる、ダメージは鎧があるからそこまでないだろう。
しかし、あの蹴りはクリーンヒットだった。殺し合いだったら間違いなく切られていた。
盗賊:良い腕だ、しかし相手から目を離してはいけない。
女騎士:・・・クッ!
まだ戦えるだろうが完全に彼女の負けだった、さぁ、今度は私の番だ。
盗賊:じゃあ今度は少し攻めてみようか。
団長:!!!!
ガキィンッ!
突然の不意打ち。
なんとか盾で防いだものの、守勢にまわされてしまった。
盗賊:まぁこれ位は受け止めてもらわないとな。
団長:クッ!
戦いの主導権を握りたかったが、そうはさせてくれなかった。
彼の連撃は騎士団最速の剣技『バルディッシュ』よりも速い。
それでも私が凌げている理由は、彼の武器がナイフであるということだ。
正面から攻めてくれるのでナイフの狭い範囲と短いリーチなら盾で守りきれる。
そんな中、時折混ぜられる蹴りがとても強力だった。
ドォンッ!!
団長oO(なんて重い蹴りなんだ・・・!!)
盾でガードしているのに凄まじい衝撃が腕を襲う。
それも当然、彼の代名詞である光速で走る脚による蹴りなのだ。
ガードもまだ出来るが、いつかは盾を持っていられなくなるだろう、そうなったら負けである。
出来る事ならその蹴りを剣で切り返したい。
・・・しかし、彼の蹴りは剣で切り払えないタイミングでしかとんでこないのだ。
団長oO(だが、その蹴りを逆手に取る・・・!!)
逆に言えば、蹴りのタイミングだけは読めるのだ。
だからコチラでその機会を作りそして───っ!!
団長:ここだ!!!
盗賊:!!
剣と盾を捨て蹴りだされた足をつかみ、彼を振り上げ地面に叩き付ける!!
団長:オオオオオッ!!!
ズドォォォンッ!!!!!
手ごたえはあった、いくら彼でもこれは効いたはずだ。
団長:な、なに?!
・・・しかし、叩きつけたのは彼ではなかった。
盗賊:まさか『シャドーパートナー』を使う羽目になるとは思わなかった。だがこれで勝負アリだ。
私は彼の形をした影を投げたのだった。
当の本人は、私のすぐ真後ろにいるようだ。
団長:いつ入れ替わった?!
盗賊:足をつかまれる直前。投げるとは思わなかったが、蹴りを誘ってるのが分かったからな。
団長:お見通しだったのか・・・完敗だ。
盗賊:もっとも、俺に勝てた所でヤツは倒せないけどな。
団長:・・・!!
その一言は、私がもっとも知りたかった事だった。
彼には分かっていたのだ、自分が暗黒の魔法使いとの戦闘を想定して戦っている事を。
そして私は負けた・・・だから、
盗賊:だがな、俺に負けてもヤツを倒すことが出来る。
団長:え?
意味が分からない。
彼に勝ててもヤツは倒せないのに、彼に負けてもヤツを倒せる・・・?
矛盾しまくっている。
盗賊:足りないのは技(スキル)じゃない、考えろ。ヤツの強さの理由はどこにある?
これは、彼からのヒントだ。
答えは・・・さっぱり分からないが、彼の台詞に打倒、暗黒の魔法使いのヒントが隠されている。
盗賊:・・・少々喋りすぎたか。じゃあな。
団長:ま、待ってくれ!!
剣と盾を拾う頃には、彼の姿は消えていた。
一瞬だけ見えた彼は、笑っていた。
それは頑張れよと応援してくれてるような気がして、私は嬉しくなった。
女騎士:だ、団長・・・。
彼女が私の方に近づいてくる。
団長:言ってしまったか・・・身体は大丈夫かい?
女騎士:あれくらい平気です・・・これからどうしますか?
団長:引き上げよう。ここの屋敷の主について調べる必要もある、彼からヤツを倒すヒントも貰えたしね。
任務には失敗したが、私にとっては大きな収穫があった。
・・・中でも、彼と話せた事はなによりの収穫だ。
団長oO(・・・後は帰ってからゆっくり考えよう。)
あのわずかな戦闘で心身疲れ果てていた。
それだけ、彼の重圧は凄まじかったと言うことだろう。
・・・だが、まだ今日は終わっていなかった。
続く(第十六話へ)。