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2024.11.22 (Fri)
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2010.01.13 (Wed)
2010.01.13 (Wed)
この物語はフィクションです。
全てはメイプルストーリーの世界観を基にした架空の物語です。
──────これはまだ暗黒の魔法使いが猛威を振るっていた頃のお話。
暗黒の魔法使いの恐怖に脅えるこの時代に、一人の盗賊がおりました。
彼はとても腕の立つ盗賊でしたが、執拗な攻撃を受けて重傷を負ってしまいました。
かろうじて逃げ切ったものの、そこが限界で倒れてしまいます。
そんな彼を救ったのは、
町外れにある小さな修道院に住んでいるシスターでした。
舞台は、盗賊とシスターが出会った次の日から始まります。
まだ朝日も出ていない早朝の、修道院のすぐ外に盗賊はいた。
盗賊oO(昨日の傷はすでに癒えた。いつものコンディションに戻ってる)
静かに呼吸を整える。
彼は何事にも集中力こそが大事だと考えていた。
その点において、昨日の自分の不甲斐なさは過去最高のものだった。
たかだが女性に泣きつかれ、小さな女の子に大声を出された位でこうも動揺するとは。
盗賊oO(少し、身体を動かすか・・・)
ゆっくりと目を開ける。
目に入ったのは、様々な木に実った色とりどりの果物。
盗賊oO(・・・アレにするか)
どんなに集中しても、空腹には勝てない。
満腹もあまり良くないが、空腹も集中力をそぎ落とす。
盗賊oO(全部の木から一個ずつ・・・ざっと見て10と少しと言った所だな・・・よし)
彼は踏み込む足に力を入れて・・・、
──────腹、減ってると思ってさ。
──────高く登りすぎて降りられなくなっちゃったけどねっ!
盗賊:・・・っ!!
ドギュンッ!!と弾丸のように彼は翔けた。
・・・脳裏に浮かんだ言葉を振り払うように。
万が一の不安もあった体調は、予想以上に良好だった。
彼は疾風となって木と木を飛び移り・・・最後の木に着地する。
盗賊:・・・ハァ。
今ひとつ、動きにキレを感じなかった。
移動した途中の木からぽとりと一つ、果物が落ちる・・・取りこぼしてしまった。
盗賊:どうしたんだよ・・・俺。
今だって、こんな事をしてる位ならさっさとこの場を去るべきだと言うのに。
盗賊oO(助けてもらった対価としては不足だが・・・これを置いたらここを去ろう)
静かに修道院の中に戻った彼は、先ほど手に入れた果物を机の上に置いた。
懐には命賭けで取った宝もあるが、これは流石に渡せない。
・・・と言うより、こんな物は渡しても意味が無いのだ。
余計な事を考える前に出て行こうと決め、そっとドアノブに手をかけた時だった。
???:行かれるのですか?
盗賊:・・・。
シスター:貴方が何故盗賊などに身を落としたかは知りません。
シスター:ですが、自分の心を偽って辛くないのですか?
盗賊:・・・なんだと?
キッと、シスターの方を睨みつける。
ですが、臆する様子もなく、彼女は机の上を指差した。
シスター:その果物・・・子供達へのお礼なのでしょう?
盗賊:・・・。
シスター:貴方は本来とても優しい心の持ち主じゃないのですか?
盗賊:五月蝿いな!!!
シスター:!
盗賊:優しい心だぁ?!そんなもん知るかよ!!
シスター:・・・。
盗賊:俺が知ってるのは宝の取り方と人やモンスターの斬り方ぐらいだっ!!
シスター:・・・そうですか。ではどうぞ行ってください。
言われなくても・・・っ!と外に出ようとしたが、不信に思って出るのを止めた。
盗賊:通報しても無駄だぞ。3分もあれば世界の端まで行ってみせる。
シスター:そんな事しませんよ。
盗賊:ふん、どうやらお人好しじゃなくて狂人だったようだな。
シスター:そうかもしれませんね。
盗賊:・・・。
分からない、この余裕は一体なんだ?
今目の前で恩を仇で返そうとしてるのに・・・。
彼女の異質さに少し悪寒が走った。
盗賊:おい、一体何を企んでいる?
シスター:企んでなどいません・・・信じているんです。
盗賊:ますます訳の分からない事を──────
シスター:貴方が、
盗賊:あ?
シスター:貴方が私の考え通りの方だったら・・・また、ここで会うことになるでしょう。
そう言って、彼女は笑った。
盗賊:・・・ふん、予言のつもりか?ならその予言は絶対外れる!絶対にだ!!
シスター:そろそろ行かないと子供たちが目を覚ましますよ?
盗賊:!
シスター:あの子達が起きたらますます出て行きにくいのではないのですか?
盗賊:・・・クソ!
シュッと盗賊は消えてしまった。
シスター:・・・なんて寂しい方なのでしょう・・・
コンコン、ガチャ。
子供C:あ、あの、おねえちゃん。二人が・・・
シスター:・・・。
子供C:おねえちゃん?
シスター:え?えっと、二人がどうしたの?
シスターが寝室を覗いてみると、
子供B:ど、どうしよう;;おねしょしちゃった;;
子供A:と、とりあえずパンツ隠せ!誤魔化すんだ!
シスター:まったくもう。パンツとシーツを洗い物のところに出しておきなさい。
シスター:それから・・・あら?
見ると、袖を掴まれていた。
子供C:お、おねえちゃん、おにいさんは?
その言葉でようやく男の子二人も盗賊がいない事に気づく。
子供A:あ、あれ?盗賊のあんちゃんいないぞ。
子供B:木登りのしかた教えてもらう予定だったのにねー。
寂しがる子供達。
シスター:・・・すぐに戻ってきますよ。ほら、昨日のお礼にって果物を取ってきてくれましたよ。
子供A:ま、マジだ!しかもこんなに!
子供B:凄いねっ!こんなに取ろうとしたら僕達じゃ一日かかっちゃうよ!
このリンゴ俺の!じゃぁ僕はオレンジもらうねー!と二人が果物に手をつける中、
子供C:・・・
女の子だけ固まっていた。
シスター:どうしたの?
子供C:・・・おにいさん、もう来ないって言ってた・・・です・・・。
シスター:!!
聞いていたのね・・・しかも彼に一番懐いていたこの子が・・・。
子供C:私が・・・おにいさんの髪の毛いじったから嫌われたのですか・・・?
涙は出ずとも、女の子は泣いていた。
そんな女の子をぎゅっと抱きしめ、出来る限り優しい声で話しかける。
シスター:違うわ。あの人も本気で嫌がってなどいなかったでしょう?
子供C:・・・。
シスター:絶対に彼はここに帰ってくるわ。信じて。
子供C:・・・はい・・・です。
シスター:ほら、彼が取ってきてくれた果物の皮むいてあげるから。
切ったリンゴを渡してあげると、嬉しそうに食べ始めた。
ザブザブ、ジャバジャバ。
シスターは朝食を終えた後、洗濯をしながら一人考えていた。
シスターoO(なんにせよ・・・時間が足りませんでした・・・)
あの時引き止めても、結果は変わらなかっただろう。
彼の凍った心を溶かすには、少々時間が足りなかった。
シスターoO(せめてもう一日、彼をここに留まらせる事が出来れば良かったのに・・・)
しかし、すでに手遅れで・・・何をするにも遅すぎた。
だからせめてと想い・・・彼女は祈った。
シスターoO(お願いです・・・この、幼い子供たちを救って下さい)
そして・・・私も・・・。
続く(第三話へ。)
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