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2024.11.22 (Fri)
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2010.01.16 (Sat)
2010.01.16 (Sat)
この物語はフィクションです。
全てはメイプルストーリーの世界観を基にした架空の物語です。
──────これはまだ暗黒の魔法使いが猛威を振るっていた頃のお話。
暗黒の魔法使いの恐怖に脅えるこの時代に、一人の盗賊がおりました。
ある時、彼が重傷を負った所を修道院に住むシスターが助けました。
しかし、彼は次の日助けてくれた彼女に怒声を浴びせ修道院を去りました。
彼女は彼の事を『寂しい人』と表現しましたが、彼の心の傷の深さまでは分からなかったのです。
ですが・・・彼女にもまた救いが必要だという事を・・・彼は知りませんでした。
洗濯を終えた後、子供達に留守番を頼んで町へと出かけました。
「俺もいくー!」「僕も行きたい!」そう言って粘る男の子2人でしたが、
女の子に「わがまま・・・よくないです」と言われては何も言い返せなかった。
シスターoO(急がなくては・・・)
彼女には、あまり時間が残されていなかった。
コンコン、と民家の戸を叩く。
ガチャ。
住民:はーいどなたー・・・って、またアンタか。
家の主はシスターの顔を見て苦い顔をした。
シスター:何度も押しかけて申し訳ございません。ですが、もう一度考えて頂けませんか?
ペコリ、と頭を下げた。
住民:何度言われてもお断りだっ!そんな余裕あるか!
バタンッ!
勢い良く戸が閉められる・・・強い拒絶を意味するものだった。
シスターoO(・・・まだ、時間はありますわ・・・)
諦めてはいけない。
どんな事でも、諦めた時が終わりなのだから。
コンコン、と別の民家の戸を叩く。
ガチャ。
住民:・・・チッ。
今度の住民はシスターの顔を見ただけで舌打ちした。
シスター:度々の訪問申し訳ありません。ですが、もう一度考えてくれませんか?
ペコリ、と頭を下げた。
住民:無理に決まってんだろ・・・二度と来るな。
バタンッ
シスター:・・・。
彼女の民家訪問は続く。
戸を叩き、出てきた住民に頭を下げ、そして断られる。
それでも彼女は諦めませんでした。
シスター:お願いします。3人とも本当に素直で良い子達なんです。
住民:そんな余裕はウチにはないよ・・・よそを当たりな。
シスター:あの、
バタンッ!
シスター:・・・。
シスター:もう一度考えて頂けませんか?みんな本当に良い子達なんです。
住民:どこも税金だけで必死なんだ・・・気持ちは分かるが、やっぱり無理だよ。
シスター:そこを何とか・・・お願いできませんか?
住民:アンタだって分かってるだろ?今はどこも余裕なんかないって、諦めな。
バタン。
シスターoO(・・・いいえ・・・諦めません・・・最後まで・・・っ!)
シスター:何度も来て申し訳ございません・・・子供たちを養ってはくれないでしょうか?
住民:もう勘弁してくれ。・・・ウチも必死なんだ。
シスター:そこをなんとか・・・お願いします。
住民:正直うっとおしいんだよっ次来るようなら兵士呼ぶぞ?!
シスター:・・・すみませんでした。
シスター:一人だけでも良いんです。養ってあげてはくれないでしょうか?
住民:ふざけんな。そのまま修道院で育てりゃいいだろうが。
バタンッ!
シスターoO(それが出来たら・・・どれだけ幸せなのでしょう・・・)
住民:子供、ねぇ。
シスター:はい、一人だけでも構わないんです。どうか育ててはくれませんか?
住民:そうだなぁ、女の子なら養ってあげてもいいよ?
シスター:!ほ、本当ですか?!ありがとうございます!!
住民:で、一体どんな子?
シスター:はい!素直で、とても優しくて・・・あぁっ!!
住民:ど、どうしたんだ?
シスター:そ、その・・・女の子ですが・・・目が見えないんです。
住民:・・・すまないが、この話は無しだ。
バタン。
シスター:・・・っ!!
そして日が暮れてしまった。
シスターoO(・・・時間切れ・・・ですね。)
結局、子供達を引き取ってくれる方は見つからなかった。
当然といえば当然の事。
今、どこの家も満足な暮らしは出来ていないのだ。
森の恵みが手に入れやすい修道院のがマシかもしれない・・・でも・・・。
シスターoO(・・・せめて、最後くらい豪勢な夕食にしてあげましょう・・・)
そう思って、彼女は通りで店を開く行商人の所へ行きました。
シスター:すみません、食材を買いたいのですが・・・。
すでに日も暮れてしまい、店をたたむ途中のようですが、対応してくれました。
行商人:え?こりゃ珍しいお客さんだ。はいはい見ていってくださいね~。
シスター:それで、その、お金じゃなくて物と交換ではいけませんか?
行商人:物にもよりますね~。一体何と交換してくれるんで?
シスター:はい、では・・・。
シスターoO(神もこの位は・・・許してくれるでしょう・・・)
ぱちん、ぱちんと、耳飾りを外した。
シスター:これと、食材を交換していただけませんか?
行商人:!!
差し出したのは、十字架の耳飾り。
聖なる力の宿る、聖職者の特別なもの。
行商人:いいんですかい?こんなものを売ってしまって。
耳飾りの意味をそれなりに理解しているらしく、商人は聞き返した。
シスター:はい。それを持っていれば、多少ですが魔よけの効果があるはずです。
行商人:へぇ!そりゃありがたいや!じゃあ!はいこれ!持っていってくださいなぁ!
シスターoO(良かった・・・。)
耳飾りの価値の分からない人だったら、こんなに沢山の食材はくれなかっただろう。
行商人:それじゃ、アッシはこれで!
シスター:あ、あの・・・っ!
行商人:へい?まだ何か?
シスター:い、いえ、なんでもありません、旅の幸運をお祈りしています。
行商人:おお!ありがとうございやす!ではこれでっ!
すたこらと行商人は去っていきました。
シスターoO(・・・)
子供3人を旅に連れてってくれませんか?・・・とは流石に言えなかったのでした。
シスター:みんな、只今帰りましたよ。
子供達:おかえりなさーい!!
といっても、子供達はバタバタと近寄って事はこない。
男の子2人が女の子を支えて連れてきてくれるのだ。
シスターoO(こんな・・・良い子達なのに・・・っ!)
ずきりと心が痛む。
でも、表情を崩してはいけない。
少なくとも、子供達の前ではちゃんと笑顔でいよう。
子供A:すっげー!この食いモンどうしたの!?なんか良い事あったの?!
子供B:わーい!今夜はご馳走だね!
沢山の食べ物を目の前にして、2人は飛び跳ねた。
シスター:うふふ、たまにはこうゆうのもいいかなって。それでは準備しますね。
そう言って、食材を持って台所へと入っていった。
子供C:・・・?
シスター:さぁ、出来ましたよ。
机に並べられたご馳走の数々。
子供AB:いっただっきまーす!!
ご馳走へ飛びついていく男の子達。
子供A:うほー!うめー!!
子供B:あ!ダメだよ独り占めしちゃっ!!
はしゃぐ男の子達に対して、盲目故に動けずにいる女の子。
シスター:ちょっと待っててね。今とってあげるから。
子供C:は、はいです・・・。
沢山あるご馳走を少しずつ切り取って女の子に渡す。
シスター:はい、どうぞ。
そう言って、女の子に渡してあげても、一向に食べようとしない。
・・・まだ朝の事を気にしているのだろうか?
シスター:大丈夫よ、あの人は絶対に戻って来ます。
そう言って女の子を励ました。
子供A:盗賊のあんちゃんももったいないよな(モグモグ)!こんなご馳走食えるチャンスだったのに(ゴクン)!
子供B:だねー(パクパク)!お姉ちゃんのご飯とっても美味しいのにね(ムグムグ)!
シスター:二人ともお行儀が悪いですよ。さ、早く食べないとなくなっちゃいますよ。
これだけ言っても、女の子はまだご馳走を口にしようとしませんでした。
子供C:おねえちゃん、今日、良い事・・・あったんですよね?
シスター:・・・ええ、そうね。
彼女は、安心させる為に嘘をつ・・・いいや・・・一つだけ。
シスターoO(あの方と少しでも話せたのは・・・幸せだったかもしれません・・・)
浮かぶのは風のように消えた彼の後ろ姿。
子供C:で、でも、おねえちゃん・・・あの・・・だったら・・・、
シスター:?
さっきから女の子の歯切れが悪かった。
それはとてもいけない事を言うかようだった。
シスターは、女の子が言葉を発するのをゆっくりと待った。
そして、決心した女の子が言った。
子供C:なら、なんで・・・そんなに、悲しそうなんですか・・・?
シスター:・・・!?
子供AB:!!!
女の子には、一緒に住んでいる皆の顔を見る事が出来ませんでした。
昨日いた盗賊の、長い髪の毛の色を見る事が出来ませんでした。
机に並んでいる色とりどりのご馳走を見ることが出来ませんでした。
ですが、盲目だからこそ、女の子だけシスターの悲しみに気づいてしまったのでした。
ご馳走で浮かれていた男の子達が、シスターの方を見ました。
食べ物ばかり見ていた2人が、シスターの違和感に気づいてしまいます。
子供A:ね、ねぇちゃん・・・その耳・・・。
子供B:イヤリングが・・・ない・・・?
先ほどまでは楽しい雰囲気はもうありませんでした。
シスターoO(・・・もう、隠しきれませんね・・・)
こちらを向く子供達。
束の間の幸せになってしまった事を後悔しつつも、
シスター:今から・・・大切な事を言います。よく聞いてくださいね。
子供達に本当の事を言う決心をしたのでした。
続く(第五話へ。)
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